「クリス・ヴェルティン、ってあなたのお友達?」
窓の外は、わずかに暗くなっていた。さっきまで人の多かったチェナーコロは、今で
は俺と彼女以外に誰もいない。
そろそろ来るだろう、と予想はしていたが、実際にその名前が彼女の口から告げられ
ると、思わず心臓が跳ねた。
あれから何度かアンサンブルを重ね、彼女が本当にたくさんのフォルテール科の生徒
と合わせていることを知った。知り合いの何人かはすでに彼女と面識があった。その上
で紹介を、と頼まれ、彼女のために何人かと口を利いたこともある。もちろん彼女のパ
ートナー候補として、だ。
自分がその位置に一番近いとは思っていなかったし、絶対にそうでなければならない
という思いもなかった。だが、唯一の例外だった人物の名前が、クリス・ヴェルティン
だった。
「まあ、友人……といっても良いかもしれませんね」
「かもしれない?」
「少し微妙なんですよ……俺とクリスは」
正確に言えば、クリスが少し特殊だった。悪く言えば、異質だ。
「微妙? もしよかったから、聞かせてもらってもいい?」
椅子に腰を下ろし、ファルさんは話を聞く姿勢になる。膝を組み、頬杖をついたその
姿は、以前に勘違いしたように、妙に貴族然としていた。
「クリスと話したことは?」
「ありません」
「彼の話を聞いたことは?」
「少しだけ。まだパートナーが決まっていないことと、あなたのお友達だということだけ」
彼のことをよく知っている者は少ない。俺と、トルティニタの二人だけだ。そして彼
のことを知りたがったのは、ファルさんが初めてではない。だが、こうして話をするの
は、俺も初めてだった。
クリスの音は少し特殊で、毛嫌いする者も多いが、聴く者によっては心に大きく響く。
あいつの音を初めて聴いたのは、もう二年も前のことだ。
あの音は、未だに忘れられない。 |